まっくら森

水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」について日々思うことを綴るブログ。

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キタネコSS-4 無花果 0 

このカテゴリーは、鬼太郎(第4期)のイメージで管理人が書いたSSを置いています。
相当妄想が入っておりますので、お許しいただける方だけご覧頂ければと思います。
もし、感想などありましたら、コメントか左のメールフォームから
メッセージを頂けると大変うれしいです。
よろしくお願いいたします。

【追記】
サイト化いたしました。
まっくら森(まとめ) → 
小説もこちらの方が若干読みやすくなっているかと思います。

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[ 2007/09/29 04:35 ] 4期キタネコ:無花果 | TB(0) | CM(2)

キタネコSS-4 無花果 1 

日中はまだ日差しも強くて蒸し暑いが、森を渡る風はもう秋の気配だ。
秋の風は、かすかな物悲しさを含んで下草をかきわけていく。
夕方も近くなると、草むらからはさやさやという虫の音が響いてきて
知らぬ間に季節が移ろってしまったことを知らせていた。

鬼太郎は、池を見下ろす窓辺に座り、手元に抱えた古い本にぼんやりと目を落としていた。
外はそろそろ日が翳りはじめ、文字を読めるのもあと小一時間といったところか。
目玉の親父は、ちゃぶ台の上の茶碗の中だ。
少しぬるまった湯に体を浸し、考えごとにふけっているように見える。
化け鴉たちも、時折、互いに呼びかけあう声を上げながら、
ゲゲゲの森の木々の枝の上でのんびりと羽を休めていた。

ふと心にひっかかる音を聞いた気がして耳を澄ますと、
横丁から続く林道を、軽やかに歩いてくる気配が伝わってくる。
本来であれば、すぐ側にいても衣擦れの音もしないしなやかな動きは、
しかし、鬼太郎にとっては特別なものであり、いつだって聞き分けることができた。
本に目を落としたまま、近づいてくる足音の響きを愉しんでいると、
やがてその気配は、窓辺に座るこちらを見つけて呼びかけてくる。
「きたろぅ~!」
鬼太郎が、今初めて気がついたようなそぶりで顔をあげると、
池の向こう岸で、おかっぱ髪の少女が身体まで揺らして大きく手を振っていた。
何もかもが楽しくて仕方がないとでもいうような満面の笑みに、
鬼太郎も自然に口元がほころんで、手を振り返す。

軽い歩調ではしごを登り、入り口の簾を持ち上げたねこ娘の顔は、
急いでやってきたせいか少し上気していた。
「いらっしゃい、ねこ娘。」
思いがけない訪問に心が弾むが、なにげない声で迎え入れる。
ねこ娘の手元にはふろしき包み。
質素な綿の布地は紅の格子柄で、使い込まれてくったりと馴染んでいた。
「これ、見て!」
そう言いながら渡された包みを、ほどく傍から甘い香りが辺りに漂う。
結び目からころりと転げ落ちた小さな塊は濃い紫色で、
ところどころ赤く爆ぜた果肉が覗いていた。
「ほぅ、無花果(いちじく)か。この辺りでは珍しいのぅ。」
ちゃぶ台に1つ2つと散らばる果実を検分しながら、目玉の親父が言う。
確かに、東京近辺では野生のものを見ることはほとんどない。
「砂かけ婆のところに来たお客さんが持ってきてくれたのよ。」
見事な実りには、温暖な南の地からやって来たという風格があった。
ごつごつとしたその実の表面に指先で触れると、思いのほか柔らかくみずみずしい。
「無花果には様々な栄養が含まれておるからな、乾燥させれば薬にもなるほどじゃ。」
目玉の親父の言葉に、ねこ娘は嬉しそうに微笑み、
「今、皮を剥くから待ってて。」
スカートを翻して、小屋の奥のささやかな台所に姿を消した。


[ 2007/09/29 04:34 ] 4期キタネコ:無花果 | TB(0) | CM(0)

キタネコSS-4 無花果 2 

その背中に、ふと違和感を感じる。
見れば、どこかにひっかけたのだろうか、
髪に結われたリボンがぱらりとほどけかかっていた。
いつものピンク色の幅広のリボンだ。
声をかけて教えようと思うが、ねこ娘の動きに合わせてさらさらと滑る
すみれ色の髪の柔らかそうな質感に気をとられ、なかなか口に出せない。
透明な蜘蛛の糸にでも囚われたように、ぼんやりとその行方を見つめていると、
こちらに気付いたねこ娘がちらりと振り返って言う。
「なぁに?鬼太郎。」
なんと答えたものかと鬼太郎が思案している間に、少女の注意はまな板の果実に戻ったらしい。
集中した様子で、せっせと手を動かし始める。
その様子にふと思いついて、鬼太郎は緩やかに立ち上がった。
そして、気配を殺して歩を進め、まな板の前で包丁を握るねこ娘の真後ろに立つ。
「な、なによ~。」
戸惑いを含んだ声で振り返ろうとしたねこ娘の肩を、後ろから軽く掴んで押し留めると、
その温かく柔らかい感触に、胸の奥でとくんと鼓動が跳ねた。
「リボンがほどけてるから、結んであげるよ。」
そう言うと、ねこ娘は驚いたように少し身体を揺らしたが、すぐに首をわずかに傾けてうなずく。
「・・・うん。」
動いた拍子に髪がさらりと流れ、少女のものか、それとも果実のものか、
甘い香りが鼻腔をくすぐる。
ねこ娘の耳たぶは、ほんのりと朱に染まっていた。
その肩越しに、まな板の上で皮を剥かれ、四つに割られた無花果の果肉が目に入る。
表皮の紫とは対照的な乳白色の果実の中央部分は真っ赤に染まり、
よく熟れた果肉に抱かれた無数の種は、今にもとろりと流れ出しそうだった。

鬼太郎は、ゆっくりと手を伸ばして薄紫の髪に触れ、リボンをするりと解く。
そして、いつもねこ娘がするように、リボンの一端をくくって輪を作り、
もう片方の端でその中程をくぐらせてから、輪の部分を左右から軽く引いて形を作った。
しかし。
同じようにやったつもりだったのだが、なぜか見慣れた形にならない。
手を離すと、リボンはこちらをからかうようにくるりと跳ねて
ちょうど縦一線よりも30度ほどずれた位置で斜めに停止する。
輪にした部分を掴んで強引に横向きに固定しようとするが、
手を離した途端、やはり同じように縦方向に跳ね戻ってしまった。
「どしたの?」
こちらの気配をじっと伺っていたねこ娘が、少し頭を反らして言う。
その頭の両脇を掌でそっと挟み、少し力を加えて正面に戻しながら、
「・・・ちょっと待ってて。」
もう一度リボンを解くところからやり直す。

ichijiku.jpg

挿絵 あったまるきぶん おもいつくまま りみさま

注意深くリボンの端を輪になるようにくくり、その根本にもう片端を絡ませてから引っ張る。
しかし、鬼太郎の努力と期待をあざ笑うかのように、リボンは再びくるりと縦に振れた。
「リボンが、縦になっちゃうんだけど・・・。」
正直に白状すると、ねこ娘は鈴を転がすような声を立てて笑う。
「も~。鬼太郎は不器用なんだから。」
うれしそうなその声色に鬼太郎が少しむっとすると、
ねこ娘は果汁に濡れた指先を桶の水に浸し、手早く手ぬぐいで水気をふき取った。
そして、
「結び方に、コツがあるのよぅ。」
という声とともに、水に濡れてほのかに紅くなった指先が鬼太郎のすぐ目の前に現れ、
リボンの端をくるくると操って、あっという間にリボン結びを作り上げた。
そして、その結び目は、驚くほどの安定感で横一線を保っていた。
その光景に、鬼太郎は先ほどまで囚われていた考えに、ふと引き戻される。


[ 2007/09/29 04:33 ] 4期キタネコ:無花果 | TB(0) | CM(0)

キタネコSS-4 無花果 3 

物悲しい風がそうさせるのか、ぼんやりと過ごすこんな午後には、
我知らず、生きてきた長い長い年月のことを思い出す。
いくつもの時代を過ごすうちに、いろいろなものが通り過ぎ、失われていった。
永遠にほど近い日々は、自分に与えられた恩恵なのか、呪いなのか、
そして、この途切れないひとつらなりの時間は、いつか終わるときがくるのだろうかと
何度問うても答えがないことを鬼太郎は知っていた。
いつのころからか、鬼太郎の傍らには少女がいるようになった。
彼女がもたらしたものは、平穏、安定、それから、日々のささやかな楽しみ。
しかし、自分は少女を得て、強くなったのか、それとも弱くなったのか。
いつかねこ娘を失う日が来るのかもしれない、そう思うと、心が震えた。

「鬼太郎?」
ねこ娘の訝しげな声に、我に返る。
ほんの一瞬、物思いに沈んでいたらしい。
とっさに、小さな肩越しに手を伸ばしてまな板の上の果実を1つ取ると、口に放り込む。
急に距離が縮まったせいか、ねこ娘の頬がほんのり紅く染まった。
果実はほの甘く、しゃりしゃりとした種の歯触りが香ばしい。
「まだ切ってる最中なのに!お行儀悪いよ~。」
そう抗議する声を聞きながら、含み笑いで身体をかわして窓際の方へ逃げると、
少女は肩をすくめて、果実を切り分ける作業に戻る。
ちょうどそのとき、小屋の戸口に姿勢の悪い影が差した。
「お~い。いいにおいがしてねぇか?何か喰ってんな、お前ら。」
今の今までうたた寝をしていたように見えた目玉の親父が、その影に声をかける。
「なんじゃ、ねずみ男か!」
薄汚い長衣をまとったねずみ男は、当然のような顔をしてどかどかと小屋に上がりこみ、
ちゃぶ台の前、目玉の親父の正面に座り込む。
「なによ~。いきなり来たって、あんたの分なんかないわよ。」
瞳を吊り上げてはいるが、憎まれ口をたたくねこ娘の声色は心なしかうれしそうだ。
「まぁまぁ、ねこ娘ちゃん。つれないこと言いっこなしよ。困ったときはお互い様ってな。」
「あたしが困ってるときに、助けてくれたことなんかないでしょ!」
2人の掛け合いが始まると、鬼太郎が口を挟む余地はなくなる。
血のつながりのない淡い絆は、存外に強く、優しい。
鬼太郎は再び窓際に腰を下ろすが、読みさしの本は閉じて脇に置いた。
こう騒がしくなっては、もう読書などできそうもない。

やがて、夕焼け空に化け鴉の鳴き声が響き始め、思いのほか早く日は落ちてしまう。
――何もないけど、二人ともうちで夕飯まで食べていくつもりかな。
そう考えながらちゃぶ台を見れば、目玉の親父はねこ娘に注ぎ足してもらった湯につかり、
すっかり騒がしくなった部屋の中で、のんびりと寛いでいた。
鬼太郎も、まあいいかという気分になり、窓枠にひじをかけて外を見る。
群青色に染まった西の空には、もう星が瞬き始めていた。
池べりの小屋に、暖かいランプの灯がともる。

終わり

[ 2007/09/29 04:32 ] 4期キタネコ:無花果 | TB(0) | CM(4)
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