まっくら森

水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」について日々思うことを綴るブログ。

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5期鬼太郎SS 妖怪の棲む街~まんじゅう屋繁盛記 0 

このカテゴリーは、ゲゲゲの鬼太郎(第5期)のイメージで管理人が書いたSSを置いています。
相当妄想が入っておりますので、お許しいただける方だけご覧頂ければと思います。
もし、感想などありましたら、コメントか左のメールフォームから
メッセージを頂けると大変うれしいです。
よろしくお願いいたします。

【追記】
サイト化いたしました。
まっくら森(まとめ) → 
小説もこちらの方が若干読みやすくなっているかと思います。

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5期鬼太郎SS 妖怪の棲む街~まんじゅう屋繁盛記 1 


日が落ちてしまうと、横丁の空気はすっかり青くなった。
くるくると舞い上がったつるべ火たちが、立ち並ぶガス燈に灯りをともしてゆき、
薄闇にさまざまな店々がぽっかりと浮かびあがる。
湯屋、豆腐屋、もめん屋、めし屋に、妖しげな露天商たち。
よくよく目を凝らすと、路地裏でうろうろと客引きをする影もある。
そこを愉快そうにそぞろ歩くのは、摩訶不思議な姿かたちの魑魅魍魎ども。
街にざわざわと心地よい喧騒が宿る。
――今日も夜が始まるなぁ。
ネコ娘は、長屋の2階から通りを見下ろしてそうつぶやいた。
妖怪横丁がもっともにぎわう時間がやってこようとしていた。

妖怪長屋の斜向かいに店を構えるのは、もうもうと白い湯気をあげるまんじゅう屋。
店内では小豆あらいが額に汗をかきかき、仕込みの真っ最中だった。
大鍋の中でつやつやと光るこしあんを、えっちらおっちらとかき混ぜる。
その手が空けば、まんじゅうを蒸すための大きな蒸し器をいくつも重ねて店先へ運ぶ。
あちらと思えばまたこちらと、一人とは思えない働きぶりで開店を急いでいた。
小さなひとだまが、待ちきれないように窓からその様子を覗きこんでいる。
小豆あらいのまんじゅうは、横丁でも評判の逸品だ。
あと半時もすれば、今夜も行列ができるのだろう。

通りの向こう側からは、よく見知った二人組がうろうろと歩いてくる。
一人は、昔ながらの編み笠に浴衣を着流したかわうそ。
もう一人は、唐傘からにょきりと手足を生やした傘化け。
ケラケラとふざけ合う二人はちっとも前を見ておらず、
あっちへふらふら、こっちへふらふらと、通りを行ったり来たり。
そこへ折り悪く現れたのは、前が見えないほど蒸し器をかかえた小豆あらい。
――なんだか、あぶなっかしいなぁ。
そう思う間もなく、ふざけて飛び退いたかわうそにどんとぶつかられ、
小豆あらいは、こっけいなしぐさでしばし旋回した後、ばったりとひっくり返った。
どんがらがっしゃんと、派手な音を立てて蒸し器が道に散らばる。
――あらら。怪我してないといいけど。
ネコ娘はため息をひとつつくと、急いで階下へ向かった。

運の悪いことに、ひっくり返ったときにひどく捻ったらしい。
小豆あらいの足首は、切ないほど真っ赤に腫れ上がっていた。
「ひどく腫れとるから、今日は安静にして休んでおれ」
特製の湿布を貼り付けながら砂かけ婆が言うと、情けない声がもれる。
「お婆、今日一日でええんじゃ。なんとかならんもんかの」
「そう言われてものぅ。こう腫れ上がっておったらどうにもならんわ」
冷たい答えに、小豆あらいはがっくりと肩を落とした。
その様子を、かわうそと傘化けがそわそわと見守っている。
すでに砂かけ婆にこっぴどく説教された二人は神妙な面持ちだ。
ネコ娘は思わず声をかける。
「ねぇ、今日はなにか特別なことでもあるの?」
「今晩は、近くの神社で秋祭りがあるんじゃあ。
大きな祭りじゃから、見物の妖怪どもや八百万の神が遠くからたくさんやって来る。
見物客は横丁にも流れてくるから、うちの店もかきいれ時なんじゃ」
そこで言葉を切ってから、小豆あらいは悲しそうに続ける。
「そう思ってあんこもたくさん仕込んだから、店を開けられなきゃ大損じゃあぁ。
わしゃあ、どうしてこうツイてないんじゃ……」
すっかり意気消沈した様子に、こちらがいたたまれなくなってくる。
――そう言えば、おまんじゅう屋さんの売り子ってしたことないなぁ。
ふと思いついて振り返ると、さっきまで神妙に座っていたかわうそと傘化けが、
そろりそろりと戸口に向かって後ずさりをしているところだった。
「ちょっと待ちなさいよ。アンタたちっ」
すばやくその首ねっこを捕まえてから、ネコ娘はにっこりと小豆あらいに向き直る。
「今晩一晩、あたしたちがお店を手伝ってあげようか?」
「えええええ~~~~っ」
「おいら、まんじゅうなんて作れないよう」
かわうそと傘化けから、一斉に不満の声が上げる。しかし、
「元はと言えば、お前らのせいじゃろ。少しは働いて溜まっとる家賃を払うんじゃ!」
鶴の一声。
砂かけ婆の言葉に、二人はうっと押し黙り、諦めの表情を浮かべた。

5期鬼太郎SS 妖怪の棲む街~まんじゅう屋繁盛記 2 


それから開店までは、大騒ぎだった。
店の奥に座る小豆あらいの指示で、ネコ娘、かわうそ、傘化けの3人が準備を進める。
まずは、店先を掃き清め、まんじゅうと書かれた大きな提灯に火を入れる。
つぎは、肝心のまんじゅうの仕込みだ。
傘化けがおぼつかない手つきで丸めたこしあんを
小豆あらいが真っ白な薄皮で包み込み、まんじゅうに仕上げていく。
顔に似合わず、繊細な手仕事だ。
それをかわうそが店先まで運び出し、もうもうと湯気を立てる蒸し器に入れれば、
ほんの10分ほどで、熱々の白まんじゅうの出来上がりだ。
蒸しあげられたばかりのまんじゅうの表面は、つやつやと美味しそうに光り、
二つに割ると、香ばしいあんこの匂いと温かい湯気が立ち上る。
「和菓子屋の売り子さん、やってみたかったのよね~♪」
一体どこから調達したのか、絣の着物に赤い帯を締めたネコ娘は、
すっかりまんじゅう屋の看板娘と言った趣で、店先を取り仕切っていた。

いつの間にか、まんじゅう屋の前には大行列ができていた。
店先は、差し出されるさまざまな化け物どもの手、手、手で埋め尽くされる。
ネコ娘は、時折助平なお客がおつりをもらう拍子に手を握ろうとするのを
ぺちりぺちりと撃退しながら、手際よく仕事をこなしてゆく。
口が耳まで裂けた恐ろしげな赤鬼が、しびれを切らして大声を上げる。
「ねえちゃん、こっちにまんじゅう15個な!」
「はいよ~。ちょっと待ってねぇ。順番だからね、順番」
そうかと思うと、家一つ分ほどもありそうな真っ青な手だけがにゅっと現れ、
3本立てた指をぶんぶんと振り回す。
――3個かな?30個かな?
そう迷いつつ、とりあえず30個詰め込んだ袋をその手にちょこんと乗せてやる。
小さな雲の上に乗った白髭の仙人、炎をまとった化け猫、頭巾をかぶった少女たち、
真っ青な顔をした双子の子どもに、やたらと色の白い糸目の美女。
「どうも~。毎度ありがとねっ!」
みな次々にまんじゅうを買っていく。
小豆あらいの言うとおり、今日のお客はいつも横丁にくるお客とは少し違っていた。
見慣れない化け物が、あっちにもこっちにも。
その中に、ネコ娘は慣れ親しんだカランコロンという下駄の足音を聞く。

「鬼太郎~」
すかさず声をかけると、行列をかき分けて幼なじみの少年が姿を現した。
いつものように、群青色の学童服にちゃんちゃんこで、足元は下駄履きだ。
頭上には目玉おやじが鎮座している。
「こんなところで、なにやってるんだい。ネコ娘」
ネコ娘は、忙しく手を動かしながら返事をする。
店先は押すな押すなの大混雑で、自然に声が大きくなった。
「なにって、まんじゅう屋の看板むすめよ~。鬼太郎もひとつどう?」
「いや、遠慮しとくよ。ところで、小豆あらいはどうしたのさ。姿が見えないようだけど」
「怪我しちゃってね。奥に座ってる。あたしたちは、今晩一晩のピンチヒッターってわけ」
「かわうそに傘化けまで働いてるのか。めずらしいね」
鬼太郎が店の奥を覗き込むと、二人が汗をかきかき忙しく働いているところだった。
「そ。元は二人がふざけてたのが原因だからねっ」
「ふ~ん。そうなんだ。大変だねぇ……」
鬼太郎はあまり関心のなさそうな態度のまま、適当な相槌を打つ。
そして、ふあああ~っと大きなあくびを一つもらした。
「――じゃ、がんばってね」
そのまま行ってしまおうとするところを、ネコ娘が慌てて呼び止める。
「待ってよぅ。鬼太郎はこんな時間にどこ行くの?」
「ん~、父さんを夜行さんのところまで送っていくところだよ。
調べものがあるんですよね、父さん?」
後半は目玉おやじに向けられた言葉で、頭上の目玉おやじがうんうんとうなずく。
それを聞いて、ネコ娘の頭に妙案が閃いた。
「じゃあ、戻ってきたらお店手伝ってよ!今、人手が足りなくて困ってるの」
途端に、鬼太郎はいかにも面倒くさそうに顔をしかめる。
「今日はもう帰って寝たいんだけど……」
「お願い!ちょっとでいいから」
「えええ~。面倒くさいなぁ」
そそくさとごまかして行ってしまおうとする鬼太郎に、頭上から声がかかる。
「鬼太郎!妖怪は助け合わねばならんぞ。困ったときはお互い様じゃ」
胸を張り腕組みをして諭す目玉おやじを見上げ、鬼太郎は大きくため息をついた。
それを見て、ネコ娘はにんまりと笑顔を浮かべる。

5期鬼太郎SS 妖怪の棲む街~まんじゅう屋繁盛記 3 


結局、目玉おやじを送ってきた鬼太郎も、渋々と店先に立つことになった。
「ネコ娘、まんじゅうの代金はいくら受け取ればいいの」
「ん~。くれる分だけもらえばいいって、小豆あらいは言ってたけど」
「ええっ?そんないい加減なことでいいのかい」
「う~ん。なんだか、今晩は特別なんだって。お祭りの夜だから」
慌しい店先で、小声でそんな会話を交わす。
鬼太郎が加わったことで、ネコ娘は少しわくわくした気分になる。
小豆あらいの言ったとおり、お客はみな勝手に代金を払っていった。
代金は、いろいろだ。
ぴかぴかと光る碧い石をそっと手の平に乗せてくれる者があれば、
拳ほどの真っ黒で柔らかい塊―しかも、ときどき脈打っている!―を手渡す者もある。
見たこともない果実がついた枝の一振り、美しい珊瑚石のひとかけら、
七色に光る液体の入った小瓶、妖しげな気配が漂うお守りに、木彫りの小さな仏像。
一つとして同じものはなく、また注文したまんじゅうに見合う価値なのかもわからない。

「はい、まいど~」
「兄ちゃん、半分だけ売ってもらいたいんだけど」
「鬼太郎~、どいてどいて~」
「ちょっ、ネコ娘危ないよ」
「割り込むなよ~。こっちはずっと並んでるんだぞっ」
「は~い、お客さんケンカしないでくださいねっ」
大混雑の店先で、鬼太郎とネコ娘は、ひたすらにまんじゅうを売り、代金を受け取った。
奥からは、小豆あらいが指示を出す声とかわうそと傘化けがヒーヒーと立ち働く物音。
ふと見上げると、夜空には星がちかちかと瞬いていて、
いつもと同じ横丁、いつもと同じ夜空なのに、いつもと少し違う夜なのが不思議だった。
そのまま視線を落とせば、恐ろしげな赤鬼も、めらめらと燃える野火も、迷子の小鬼も、
みんな、まんじゅうをほおばりながら、にっこりと笑顔をもらしている。
――ああ。今日、お店を開けてよかったなぁ。
ネコ娘は、ふいにそんな気持ちがわいてくるのを感じた。
――遠くから来たお客さんも、常連さんも、みんなおまんじゅうを楽しみにしてたんだな。
甘党のお化けたちが買い求める午前3時のおやつ。
そうして、小豆あらいのまんじゅうは、飛ぶように売れていった。

どれぐらいの時間が経ったのだろうか。
気がつくと、代金入れのざるにはこんもりとお宝らしきものが積まれ、
一方、蒸し器に残るまんじゅうはあとわずか。
東の空が白々と明けはじめる。
やがて、横丁を行きかう化け物どもの影もまばらになり、
最後のお客が去ったとき、まんじゅう屋には耳に痛いほどの静けさが戻ってきていた。
「今年は、去年よりもよく売れたなぁ」
心地よい疲れを顔に浮かべた小豆あらいが、感慨深げな声でそうもらす。
ぐったりと座り込んだかわうそと傘化けも、まんざらでもない表情だ。
一晩中休みなく働いたネコ娘もすがすがしい気分だった。
「売り子さんがよかったかな」
付け加えられた言葉に、まんざらでもなくにやけると、鬼太郎が隣でつぶやく。
「ネコ娘の接客は、迫力があってなかなかよかったよね」
「にゃぁああっ」

小豆あらいが、勤めを終えた鬼火たちに売れ残りのまんじゅうをわけてやっている。
ガス燈の灯りもいらないほどに、もう外は明るくなっていた。
「ふあああ~。今日は疲れたなぁ……」
鬼太郎が、何度目かの大あくびをしながらぼやく。
それを横目で見ながら、ネコ娘は温かいまんじゅうを二つに割った。
バイト代の代わりに、小豆あらいからもらった最後のまんじゅう。
「あたしも疲れちゃった。けど、今日は楽しかったね」
言いながら、片方を鬼太郎に渡し、もう片方は自分でかじる。
「……そうだね。たまにはこういうのも、悪くないね」
照れたように笑うその横顔を、そっと盗み見る。
甘くて少ししょっぱいこしあんが、口の中でほろりと溶けた。
何度も食べたことのあるまんじゅうが、いつもよりも美味しく感じられるのは、
きっとこの心地よい疲れのせいだ。
体をふんわりと包む高揚感。でも、お祭りはもう終わり。また来年。
「さて、と。父さんを迎えに行くかな」
「あ、あたしも行く~」
ネコ娘は、踵を返した鬼太郎を急いで追いかける。
カランコロンと下駄の音。
晩秋の朝早く、気温は肌寒いくらいだったが、
心はぽかぽかと温かく、煉瓦造りのでこぼこ道を二人は並んで歩いていった。

(終わり)

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