まっくら森

水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」について日々思うことを綴るブログ。

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悪魔くんSS-1 時間の精霊との対話 1 

【追記】
サイト化いたしました。
まっくら森(まとめ) → 
小説もこちらの方が若干読みやすくなっているかと思います。

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ここはどこでもない場所。
完全な闇の中を透き通った無数の糸のような光がさらさらと流れていく。
川のほとりには、一人の年老いた悪魔がぼんやりと座り込んでいた。
光に照らされてかすかに浮かび上がる悪魔は、年経りすぎてもはや性別も判然としない。
その顔からは、既に鼻や頬などの造作が溶けて剥がれ落ちており
垂れ下がりきったまぶたの下の目は盲いているようだ。
平坦な顔はそれでも薄く光る川のほうに向けられ
ただ魅入られているようにゆらゆらとゆれ続けていた。

そこへどこからともなく一筋の黒い影が現れる。
黒いタキシードにシルクハットをかぶり、背には同じく黒いマント。
白い手袋とわずかに露出した顔だけが暗闇に白く浮かびあがる。
彼の名は、メフィスト二世。
地獄界と悪魔界を分けた大戦を治めた大悪魔メフィスト老の息子として
その名を悪魔界に轟かせる強力な悪魔の一人だ。

メフィスト二世は、川のほとりに座り込む老悪魔の傍におもむろに座り込む。
そして、聞いているのかいないのかも定かではないその老悪魔に対し
ぽつりぽつりと語り始めた。

*******

おう、久しぶりだな。
とは言っても、お前には久しぶりもなにもないか。
時間の精霊だもんな。
何万年もの月日をただ時間の流れを眺めてすごす気分ってのはどうだよ?
俺ならぞっとしないけどな。
永遠の命なんて別に欲しくないし、頼まれても代わってやるのはごめんだな。

そうそう、今日はちょっと面白いことがあったから
お前にも話してやろうと思って来たんだよ。
どうせ退屈してるだろうと思ってな。

お前、悪魔くんの話は知ってるか?
知ってるわけないか。
ずっとここで時間の川を見張ってんだもんな。
最近、悪魔界はこの話で持ちきりだぜ。
悪魔くんっていうのはよ、1万年に1人地上に現れて、
魔界から悪魔を呼び出し、その力を使って大いなる幸せをもたらす者なんだってよ。
その悪魔くんが、最近人間界に現れたんだけどよ、
笑っちゃうことに俺はその第一使徒なんだと。
使徒っていうのは、上品な召使いみたいなもんだ。

この悪魔くんっていうのがよ、悪魔使いが荒いったらないんだ。
俺のこと便利な乗り物くらいにしか思ってねえな。
好物のラーメン食ってても平気で呼び出すしよ。
しかも、えらそうに命令すんだぜ。
人間のくせに片腹痛いったらないぜ。
でもよ、悪魔くんっていうのは、ふしぎなヤツなんだよ。
人間の、しかもまだ子供なんだけどよ。
たいした魔力もねーし。ま、他よりちょっと頭はいいけどな。
なんつうか、普段は虫も殺さない平和主義者みたいな顔しやがって
いざというときはえらく冷酷になったりしてよ、
悪魔もまっさおってやつさ。
まあその理由もわからないでもないけどよ。

悪魔くんの夢は、地上に理想郷を作ることなんだよ。
ありとあらゆる生き物がしあわせに暮らせる世界だってさ。
悪魔も人間も仲良く暮らせる理想の世界だぜ。
最初は、ばかじゃねえのって思ったよ。俺だって。
でもよ。悪魔くんはちょっと違うんだよ。
俺とも俺がこれまで見てきた悪魔や人間ともよ。

お前ほどじゃないけどさ、俺だってもう何千年も生きてきた。
悪魔だからな。特に何も考えなくても気楽にやってきたわけよ。
魔界でも人間界でも戦争はしょっちゅう起こるじゃねえか。
そこで悪魔が何千匹死のうと人間が何万人死のうと、俺には関係ねえよって思ってたよ。
でもよ、悪魔くんに会って、なんていうのかな、こう、
ちょっと気の持ちようが変わっちまったんだな。
何千年も生きてきて同じだったものが、急に変わるなんてよ。
俺が一番びっくりしてるぜ。

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悪魔くんSS-1 時間の精霊との対話 2 

悪魔くんは、元々優しいヤツなんだと思うよ。
自分を犠牲にしても、友達や家族を守るようなさ。
自分がぼろぼろになってても、俺の心配したりするんだぜ?
あれはちょっと参るよな。こっちは悪魔なんだからよ。
でもよ、悪魔くんの夢は並大抵のことじゃ実現できないんだ。
そんなことは俺でもわかるさ。
そのために、手段を選べないこともあるだろう。
あいつが冷酷な顔を見せるのはそんなときだと思ってる。

悪魔くんのことは、俺が助けてやらなきゃなって思うんだよ。
正直、悪魔くんに頼られてるっていうのは悪い気しないしな。
あいつ、困るとすぐ俺のこと呼びやがるしよ。
気安いったらないけど、俺が悪魔くんの第一使徒なんだし、仕方ねえかって思うよ。
俺は悪魔くんほど頭よくないからよ、悪魔くんの考えが全部わかるわけじゃない。
でも、俺は悪魔くんは間違ってないと思う。
悪魔くんの夢が俺の夢なのかもしれないって思うときもあるしな。
俺と悪魔くんでは背負っているものも違うんだろうけどよ、
俺の力で悪魔くんが望む世界が作られてく気分は悪くないぜ。
らしくないって?
へへ。言ってろよ。
世界が終わりに向かうとしても、俺は悪魔くんについて行くつもりでいるさ。

ただ、最近思うんだよ。
もし、本当に悪魔くんが理想郷を作り上げたら、俺はどうなるのかってさ。
悪魔くんが本当に邪悪なやつらを封印するまでは、俺の力が必要だ。
でも、世界が本当に平和になったら、俺の力は邪魔になるんじゃないのか。
大きな力が必要になるのは、混沌と変革のときと決まってら。
平和が来れば、そんな力は平穏を脅かす脅威でしかない。
そんなのは俺だってわかるさ。
俺らしくねえか。そうだよな。
俺だってこんなこと考えたくねえよ。
悪魔くんに会う前だったら、頭をよぎりもしなかっただろうな。

もしかしたら、悪魔くんがなんとかしてくれんじゃないかって思うときもあるしさ。
でもよ、俺は悪魔くんの重荷にはなりたくねえしな。

結局、失うものと得るものは、同じ重さなのかもな。
俺は自分が存在する意味を見つけた代わりに、それを失う可能性も背負っちまったってわけさ。
でもよ、俺は悪魔くんに会ったことを後悔してないぜ。
知る前に戻ることはできないけどよ、戻りたいとも思わねえよ。

最近、世界が変わっていくってことの意味がようやくわかった気がするんだ。
そして、俺もその世界の一部だってことがな。
変わっていくっていうのは結構いいもんだぜ。
明日は今日と違う日ってわけさ。

俺は悪魔くんと違って、難しいこと考えるの苦手だからな。
今日はここまでだ。
次に来るときは、千年王国ができあがった報告にくるぜ。
それまで、またぼんやり待ってろよ。
またな。

****************

そうして、若い悪魔が一人どこかへ飛び去ると、
残ったのは、またぼんやりとたたずむ老悪魔のみ。
その傍らを透き通った無数の糸のような光がさらさらと流れていく。

終わり

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